//衛星データを活用した 持続可能な農業とグリーン成長
Whitepaper · 農-Agriculture / 環-Environment · 国際開発

衛星データを活用した
持続可能な農業とグリーン成長

衛星データを活用した 持続可能な農業とグリーン成長

アフリカを含めたグローバルサウスにおける農業・グリーンセクターでの衛星データ利活用が注目を集めています。本ホワイトペーパーは TICAD Business Expo & Conference での登壇内容をもとに編集したもので、SAPZ (農業生産特区) における衛星データの活用、バイオエタノール/SAF事業におけるキャッサバ栽培モニタリング、金融セクターとの連携の3つの視点から、衛星データが「データに基づく農業・エネルギー・金融の意思決定」を可能にする価値を解説します。

アフリカ開発銀行が推進する農産業特区 (SAPZ)

アフリカは広大な土地と豊かな農業ポテンシャルを有しながらも、インフラ不足により十分な生産性を発揮しきれていないという課題があります。その課題解決のために導入されたのが Special Agro-Industrial Processing Zones (SAPZ) です。

SAPZでは農業ポテンシャルの高い地域にインフラを整備し、農業投資や貿易を促進。食糧生産効率の改善、付加価値の増大、雇用創出などが期待されています。小規模農家から大規模農家まで幅広いプレイヤーが関わり、国際市場とも結びつくエコシステムの構築を目指しています。

SAPZのバリューチェーン概要
SAPZのバリューチェーン概要
図1 SAPZのバリューチェーン概要 (出典: アフリカ開発銀行 / TICAD Business Expo & Conference)

2024年9月時点でのSAPZへの投資総額は約19億米ドル(1ドル145円換算で約2,755億円相当)規模にまで拡大しており、現在進行中の18プロジェクトは11カ国27拠点にまで広がっています。雇用効果は直接雇用100万人、間接雇用200万人に及ぶとされています。

経済規模は大きいものの、前述の通りアクセス性に課題があるSAPZ。そこで注目されているのが衛星データを活用したリモートセンシングです。衛星リモートセンシングの一般的なメリットは、広域を一度に観測できる点に加え、過去に遡っての解析や複数時期・時系列での変化を捉えることに優れている点が挙げられます。SAPZでは衛星データ活用により、プロジェクトモニタリング時における長距離移動コストの削減をはじめ、観測頻度を高めることで、インフラ建設などのプロジェクト進捗や作物の生育をより効率的に把握することが期待されています。

プロジェクトユースケース: ナイジェリア

オヨ州で農業変革センター(ATC)が稼働、オグン州で農業産業ハブ(AIH)が建設中。GISやリモートセンシングを活用し、気候スマート農業のモニタリングやオフライン対応のモバイルアプリで効率化を検討中。

ナイジェリアにおけるSAPZ事例
ナイジェリアにおけるSAPZ事例
図2 ナイジェリアにおけるSAPZ事例 (出典: アフリカ開発銀行)

プロジェクトユースケース: コートジボワール

39haのアグロパーク建設が進行しており年内に完成予定。2カ所のATCでは、8か月で約1.6万トンの農産物を取引し、総額25億XOF(西アフリカCFAフラン)を記録。貯蔵施設や屠殺場、安全な水供給(62万人以上が恩恵)といった生活基盤強化も進行中。こちらのプロジェクトでもGISや衛星データを活用することで情報収集や意思決定のサポート効率化を検討しています。

コートジボワールにおけるSAPZ事例
コートジボワールにおけるSAPZ事例
図3 コートジボワールにおけるSAPZ事例 (出典: アフリカ開発銀行)

Satarem America Inc. の取り組み: キャッサバ由来バイオエタノールとSAF

Satarem Americaの事業概要
Satarem Americaの事業概要
図4 Satarem Americaの事業概要 (出典: Satarem America)

Satarem Americaは、コートジボワールおよびエチオピアにおいて、キャッサバを原料とした大規模なバイオエタノールプラントの建設プロジェクトを推進しています。将来的には持続可能航空燃料 (SAF: Sustainable Aviation Fuel) への転換も視野に入れており、農業振興・再生可能エネルギー・気候変動対策を同時に実現する「バイオエコノミー」のモデルケースとして注目されています。

コートジボワール(Ivory Coast)における農場は30,000ha、5,000haなど広大であり、機械化や灌漑によって1haあたり70〜100トンの生産を目指しています。エチオピアのプロジェクトでは30,000haの農場でキャッサバの生産をしており、エチオピア航空へのSAF提供を目指しています。

コートジボワール(Ivory Coast)のキャッサバ農地の衛星写真
コートジボワール(Ivory Coast)のキャッサバ農地の衛星写真
図5 コートジボワール(Ivory Coast)のキャッサバ農地の衛星写真 (出典: Satarem America)

同社のプロジェクトにおいては、広大な農地を効率的かつ高頻度に監視する必要があります。気候変動の影響による干ばつや豪雨、作物成長の進捗をタイムリーに把握するため、衛星データを活用したリモートセンシングを検討されています。また、同社は弊社が運営する衛星データ利活用プログラム『SateBiz』にも参画しており、今後もアフリカを中心とした農業DXにおける協業を推進していく予定です。

みずほ銀行の視点: 金融と衛星データのシナジー

アフリカにおける農業・アグリテック投資の大きな可能性
アフリカにおける農業・アグリテック投資の大きな可能性
図6 アフリカにおける農業・アグリテック投資の大きな可能性 (出典: みずほ銀行)

みずほ銀行によると、農業はアフリカの雇用とGDPを大きく支えているにもかかわらず、他のセクターに比べて投資が集まりにくい状況にあります。その理由として、「データ不足」と「リターンの低さ」が挙げられています。

そこで注目されているのが、衛星データを活用したデータ収集です。金融情報と衛星データは高い相乗効果を持ちます。衛星データの活用によって、高品質なデータの提供、タイムリーな情報取得、標準化された分析や成果物の作成が期待されます。一方で、資金調達やキャピタルフローにおいても、インパクト評価、信用リスク管理、規制当局への報告といった点で大きなシナジーが見込まれます。

金融セクター視点での衛星データ×アグリテック
金融セクター視点での衛星データ×アグリテック
図7 金融セクター視点での衛星データ×アグリテック (出典: みずほ銀行)

この仕組みによって、農業分野における投資は従来よりも透明性と信頼性を備え、資金循環の加速が期待されます。特に、衛星データの「標準化」「リアルタイム性」「透明性」は、金融機関が農業プロジェクトの信用力を評価する際に不可欠な基盤となりつつあります。

終わりに

アフリカにおけるSAPZやバイオエタノール事業、そして金融セクターとの連携は、持続可能な農業・エネルギー・社会の実現に向けた大きな一歩です。特に、衛星データはこれらの事業を「持続可能なビジネス」に変える鍵となっています。従来は広大なエリアを管理しきれないという課題がありましたが、衛星を中心としたリモートセンシング技術によって、日次・週次レベルでの進捗把握が可能になりました。これにより、農業の生産性向上だけでなく、投資判断やリスク管理の高度化が促進されることが期待されます。

今後もアフリカをはじめとするグローバルサウスの農業・エネルギー革新を世界へとつなげていくためには、単なる技術導入ではなく、衛星データを活用したスマートモニタリングとデータ駆動型の意思決定が不可欠です。

衛星データは「補助的なツール」ではなく、農業・エネルギー・金融を結びつける社会インフラとしての役割を担うポテンシャルを持っています。農業従事者や金融関係者の視点からも、衛星データがプロジェクトの「透明性・効率性・信頼性」を高め、持続可能な発展を下支えする基盤となることが示されました。衛星データの利活用は、単に農業やエネルギー分野にとどまらず、社会全体のレジリエンスを高め、次世代への持続可能な未来を築く重要な手段であるといえるでしょう。

農地モニタリング・遊休農地検出のサンプルをデモ画面でご確認いただけます。

遊休農地探索AIのデモを試す
← 実績・ニュース一覧